手術によってストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設した後、「自宅で自分でケアしていけるだろうか」「皮膚が荒れたり、漏れたりしたらどうしよう」と、不安を抱える方やご家族は少なくありません。ストーマのある生活は、慣れれば多くの方が問題なく送れるものですが、退院直後や慣れないうちは、専門的なサポートがあると大きな安心につながります。そのサポートを担うのが、訪問看護です。
この記事では、ストーマとは何かという基本から、ストーマのある生活で感じやすい不安、訪問看護がどのようにストーマケアを支えるか、利用の方法、そしてストーマケアに対応した訪問看護ステーションの選び方まで、ご本人・ご家族にも分かりやすく解説します。なお、ストーマの具体的なケアの手技や、皮膚トラブルへの対処、装具の選択などは、医療的な判断を伴います。この記事では全体像と、訪問看護による支えを中心にお伝えしますので、実際のケアは必ず訪問看護師や主治医など専門職の指導のもとで行い、気になることは自己判断せず相談してください。
ストーマとは
まず、ストーマとは何かを理解しましょう。基本を知ることが、安心につながります。
手術で作られた排泄の出口
ストーマとは、手術によってお腹に作られる、便や尿の排泄の出口です。病気などにより、通常の経路で排泄することが難しくなった場合に造設されます。便を排泄する「消化管ストーマ(人工肛門)」と、尿を排泄する「尿路ストーマ(人工膀胱)」があります。ストーマからは、装具(専用の袋など)に排泄物を受けて、生活します。
ストーマのある生活
ストーマがあっても、多くの方は、慣れれば日常生活を問題なく送ることができます。仕事や趣味、外出、入浴なども、工夫しながら続けられます。ただし、ストーマや周囲の皮膚を清潔に保ち、装具を適切に交換・管理するといった、ストーマならではのケアが必要になります。このケアに慣れるまでが、一つの課題になります。
ケアが必要になる理由
ストーマは、自分で便や尿の排泄をコントロールすることが難しいため、装具を使って排泄物を管理します。装具の交換や、ストーマ周囲の皮膚のケアを、適切に行う必要があります。これらのケアが適切でないと、皮膚のトラブルや、装具の漏れなどが起こることがあります。だからこそ、正しいケアを身につけ、続けることが大切なのです。
ストーマのある生活で感じやすい不安
ストーマを造設した方やご家族は、さまざまな不安を感じます。その不安は自然なものであり、多くの方が経験するものです。
自分でケアできるかという不安
最も多い不安が、「自分で(あるいは家族が)ストーマのケアをしていけるだろうか」というものです。入院中は看護師がケアしてくれていても、自宅に戻れば、自分たちで対応する必要があります。装具の交換や皮膚のケアを、正しくできるか不安に感じる方は多くいます。この不安は、専門的なサポートによって、大きく和らげられます。
皮膚トラブルや漏れへの不安
ストーマ周囲の皮膚が荒れたり、装具から排泄物が漏れたりすることへの不安もあります。皮膚トラブルや漏れは、ストーマのある生活で起こりうるものですが、適切なケアと、早めの対応で防いだり対処したりできます。「どうすればいいか分からない」という不安は、相談できる専門職がいることで軽減されます。
外出や入浴など生活への不安
「外出できるのか」「お風呂に入れるのか」といった、日常生活への不安もあります。ストーマがあっても、適切な管理をすれば、外出も入浴も可能です。ただし、それぞれに工夫やコツがあり、最初は戸惑うことも多いものです。こうした生活上の工夫も、訪問看護師から学ぶことができます。
精神的な負担
ストーマを造設したことによる、精神的な負担も見過ごせません。体の変化を受け入れることや、これまでと違う生活への戸惑い、人に知られたくないという気持ちなど、心の負担を抱える方もいます。こうした精神的な面も、専門職が寄り添い、支えることができます。一人で抱え込まないことが大切です。
訪問看護によるストーマケアの支え
訪問看護は、ストーマのある方の在宅生活を、さまざまな面から支えます。具体的にどう支えるのかを見ていきましょう。
装具交換のサポートと指導
訪問看護師は、ストーマ装具の交換をサポートし、本人やご家族が自分でできるよう指導します。正しい交換の方法を、実際の場面で丁寧に教わることで、少しずつ自分でできるようになっていきます。最初は難しく感じる装具交換も、専門職の指導を受けながら練習することで、身につけられます。
皮膚の状態の観察
訪問看護師は、ストーマ周囲の皮膚の状態を専門的に観察します。皮膚に異常がないか、トラブルの兆候がないかを、専門職の目で確認します。皮膚トラブルは早期に気づいて対応することが大切なため、定期的に専門職が観察することは、大きな安心につながります。
トラブルへの対応と受診の判断
装具の漏れが続く、皮膚が荒れてきたといったトラブルが起きたとき、訪問看護師が対応を助け、必要に応じて受診の判断をします。「これは様子を見ていいのか、受診すべきか」という判断は、素人には難しいものです。専門職が、状態を見て適切に判断し、必要なら医療機関につなげてくれます。この判断のサポートは、訪問看護の重要な役割です。
日常生活への助言
訪問看護師は、ストーマのある生活を送るうえでの、日常生活への助言も行います。食事の工夫、入浴の方法、外出時の対応、装具の扱いなど、生活に密着したアドバイスをもらえます。実際の生活の場である自宅で助言を受けられることは、訪問看護ならではの強みです。生活に即した具体的なサポートが得られます。
精神的な支え
訪問看護師は、ストーマを造設した方の精神的な支えにもなります。不安や戸惑いを受け止め、寄り添いながら、前向きに生活していけるよう支えます。定期的に訪れ、話を聞いてくれる専門職の存在は、心の支えになります。身体的なケアだけでなく、心のケアも、訪問看護の大切な役割です。
訪問看護師だからできること
ストーマケアにおいて、訪問看護師だからこそできる支援があります。その強みを見ていきましょう。
自宅での生活に合わせた支援
訪問看護師は、実際の生活の場である自宅で、その人の暮らしに合わせた支援ができます。その家の設備や、生活のリズム、本人の状態に合わせて、無理のないケアの方法を一緒に考えます。病院という特別な環境ではなく、実際に生活する自宅での支援だからこそ、現実に即したものになります。
変化に早く気づける
定期的に訪問する訪問看護師は、ストーマや皮膚の状態、本人の様子の変化に、早く気づける存在です。前回と比べてどうか、という視点で観察できるため、トラブルの兆候を早期に捉えられます。この早期発見が、トラブルの重症化を防ぐことにつながります。同じく在宅で専門的なケアを要する褥瘡については、「褥瘡(床ずれ)の在宅ケアと訪問看護|原因・予防・訪問看護の役割をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
本人・家族への指導
訪問看護師は、本人だけでなく、ケアに関わるご家族への指導も行います。家族がケアの方法を理解し、日常的にサポートできるようになることで、本人の生活はより安定します。本人と家族の両方を支え、自分たちでケアしていける力を育てることが、訪問看護の役割です。
専門的な知識を持つ看護師
訪問看護ステーションのなかには、皮膚・排泄ケアに関する専門的な知識を持つ看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師など)が在籍しているところもあります。こうした専門的な知識を持つ看護師によるケアは、より高度で的確なものが期待できます。ストーマケアに力を入れているステーションを選ぶことも、一つのポイントです。
ストーマのトラブルと対応
ストーマのある生活では、トラブルが起こることもあります。どう向き合えばよいかを解説します。
起こりやすいトラブル
ストーマで起こりやすいトラブルには、ストーマ周囲の皮膚が荒れる、装具から排泄物が漏れる、装具がうまく貼り付かない、といったものがあります。これらは、ストーマのある方が経験しうる、よくあるトラブルです。適切なケアや、専門職のサポートによって、予防したり、対処したりできます。
早めに相談することの大切さ
トラブルが起きたときや、「何かおかしい」と感じたときは、早めに訪問看護師や主治医に相談することが大切です。早めに相談すれば、トラブルが大きくなる前に対処できます。「このくらいで相談していいのか」とためらう必要はありません。気になることは、早めに専門職に相談しましょう。
自己判断で対処しないこと
皮膚トラブルなどが起きたとき、自己判断で市販の薬を塗ったり、自己流で対処したりすることは避けましょう。ストーマ周囲の皮膚は敏感で、誤った対処はかえって悪化を招くことがあります。トラブルの際は、自己判断せず、必ず訪問看護師や主治医など専門職に相談し、その指導のもとで対処することが大切です。
ストーマケアで訪問看護を利用するには
ストーマケアで訪問看護を利用したい場合、どうすればよいのでしょうか。利用の流れを解説します。
主治医に相談し指示書をもらう
訪問看護は、主治医が発行する「訪問看護指示書」に基づいて提供されます。そのため、まず主治医に、訪問看護を利用したい旨を相談します。主治医が必要と判断すれば、指示書が発行され、訪問看護を利用できるようになります。退院前であれば、入院先の医師や看護師に相談するとよいでしょう。
訪問看護ステーションを探す
訪問看護を提供するステーションを探して、契約します。お住まいの地域で、ストーマケアに対応している訪問看護ステーションを探しましょう。病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカーなど)や、ケアマネジャーが、ステーション探しを手伝ってくれることもあります。一人で探すのが難しい場合は、こうした窓口に相談しましょう。
医療保険での利用について
ストーマケアの訪問看護は、状態や年齢に応じて、医療保険または介護保険が適用されます。介護保険の認定を受けていない方でも、医療保険で訪問看護を利用できる場合があります。どちらの保険が適用されるかは状態によって異なるため、主治医や訪問看護ステーションに確認しましょう。保険の仕組みについては、「訪問看護は介護保険と医療保険どちらが使える?|適用条件・優先順位・費用の違いを徹底解説」もあわせてご覧ください。
退院前からの準備
ストーマを造設して退院する場合は、退院前から訪問看護の利用を準備しておくとスムーズです。入院中に、退院後の訪問看護について、病院の相談窓口や医師に相談しておけば、退院後すぐにサポートを受けられます。退院してから慌てないためにも、早めの準備が大切です。
訪問看護の頻度・進め方
ストーマケアの訪問看護は、どのくらいの頻度で、どう進むのでしょうか。目安を解説します。
退院直後の頻度の目安
退院直後は、まだケアに慣れていないため、比較的頻繁に訪問することが多くあります。装具交換のサポートや指導を受けながら、少しずつ自分でできるようになっていきます。頻度は状態や必要性によって異なりますが、慣れないうちは手厚くサポートを受けられます。
状態に応じて調整される
訪問の頻度は、本人の状態や、ケアの習熟度に応じて調整されます。自分でケアできるようになれば頻度を減らし、トラブルがあれば一時的に増やすなど、柔軟に対応されます。その時々の状態に合わせて、必要なサポートを受けられるのが訪問看護の良いところです。
制度との関係
訪問看護の頻度は、医療保険・介護保険の制度の範囲内で決まります。状態によっては、頻回の訪問が必要になることもあり、そうした場合には、主治医が交付する特別訪問看護指示書などによって、一時的に頻回の訪問が可能になる仕組みもあります。制度を活用しながら、必要なケアを受けられます。特別訪問看護指示書については、「特別訪問看護指示書とは?|交付条件・期間・通常の指示書との違いをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
ストーマケアに対応した訪問看護ステーションの選び方
ストーマケアを受けるなら、それに対応したステーションを選ぶことが大切です。選び方のポイントを解説します。
専門的な知識・経験があるか
ストーマケアの経験が豊富で、専門的な知識を持つ看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師など)が在籍しているステーションだと、より安心です。ストーマケアに力を入れているか、経験があるかを確認しましょう。専門性の高いケアを受けられることは、大きな安心につながります。
相談・緊急時の体制があるか
トラブルが起きたときに、相談できる体制や、緊急時に対応してくれる体制があるかも重要です。装具の漏れや皮膚トラブルは、いつ起こるか分かりません。困ったときに相談でき、必要なら対応してもらえる体制があるステーションだと、安心して過ごせます。緊急時の連絡体制を確認しましょう。
主治医・病院と連携できるか
主治医や、手術を受けた病院と、スムーズに連携できるステーションだと安心です。ストーマケアでは、状態に応じて医療機関との連携が必要になることがあります。訪問看護ステーションが、主治医や病院と適切に連携してくれることで、切れ目のないケアを受けられます。連携体制も、選ぶ際のポイントです。
本人・家族に寄り添ってくれるか
技術面だけでなく、本人やご家族の気持ちに寄り添ってくれるステーションであることも大切です。ストーマのある生活には、身体的な面だけでなく、精神的な支えも必要です。丁寧に話を聞き、不安に寄り添ってくれる看護師がいるステーションだと、安心して長く付き合えます。見学や相談の際の対応も、参考になります。ステーション選びについては、「訪問看護ステーションの選び方【利用者・家族向け】|後悔しないための7つのチェックポイント」もあわせてご覧ください。
退院直後から訪問看護を始めるとよい理由
ストーマケアの訪問看護は、退院直後から始めることをおすすめします。その理由を解説します。
入院中のケアを引き継げる
退院直後から訪問看護を始めれば、入院中に行われていたケアを、そのまま自宅で引き継げます。入院中の情報を踏まえたケアを、切れ目なく受けられることで、スムーズに在宅生活に移行できます。ケアが途切れないことは、本人にとって大きな安心になります。
正しいケアを早く身につけられる
退院直後から専門職のサポートを受けることで、正しいケアの方法を早い段階で身につけられます。自己流のケアが定着してしまう前に、正しい方法を教わることで、トラブルを防げます。最初に正しいやり方を身につけることが、その後の安定した生活につながります。
不安の大きい時期を支えてもらえる
退院直後は、慣れない在宅でのケアに、不安が最も大きい時期です。この時期に専門職のサポートがあることは、大きな心の支えになります。不安の大きい時期を、一人で抱えずに、専門職に支えてもらえることで、安心して新しい生活をスタートできます。だからこそ、退院直後からの利用がおすすめです。
よくある質問
ストーマケアで訪問看護を使えますか?
使えます。ストーマケアは、訪問看護で対応できるケアの一つです。訪問看護でできることの全体像は、「訪問看護でできることは?|サービス内容・できないこと・利用条件を徹底解説」をご覧ください。装具交換のサポートや指導、皮膚の観察、トラブルへの対応、日常生活への助言、精神的な支えなど、幅広く支援を受けられます。利用には主治医の訪問看護指示書が必要なので、まず主治医に相談しましょう。
介護保険がなくても利用できますか?
利用できる場合があります。ストーマケアの訪問看護は、状態や年齢に応じて、医療保険または介護保険が適用されます。介護保険の認定を受けていない方でも、医療保険で訪問看護を利用できることがあります。どちらの保険が適用されるかは状態によって異なるため、主治医や訪問看護ステーションに確認してください。
週に何回来てもらえますか?
本人の状態やケアの習熟度によって変わります。退院直後など、まだケアに慣れていない時期は比較的頻繁に訪問し、自分でできるようになれば頻度を調整していきます。トラブルがあれば一時的に増やすなど、柔軟に対応されます。頻度は制度の範囲内で、状態に応じて決まります。
家族もケアを覚える必要がありますか?
本人が自分でケアできる場合は、必ずしも家族が覚える必要はありませんが、家族もケアを理解し、サポートできると、本人の生活はより安定します。訪問看護師は、本人だけでなく家族への指導も行います。どこまで家族が関わるかは、本人の状態や家庭の状況に応じて、無理のない範囲で考えていくとよいでしょう。
どんなステーションを選べばよいですか?
ストーマケアの経験や専門的な知識があるか、相談・緊急時の体制があるか、主治医や病院と連携できるか、本人・家族に寄り添ってくれるかを確認するとよいでしょう。特に、皮膚・排泄ケアの専門的な知識を持つ看護師が在籍しているステーションだと安心です。見学や相談の際の対応も参考になります。
まとめ
ストーマとは、手術によってお腹に作られる、便や尿の排泄の出口です。ストーマがあっても、適切なケアを身につければ、多くの方が日常生活を問題なく送れます。しかし、退院直後や慣れないうちは、装具交換や皮膚のケア、トラブルへの対応などに不安を感じるものです。訪問看護は、装具交換のサポートと指導、皮膚の観察、トラブルへの対応と受診の判断、日常生活への助言、精神的な支えといった形で、ストーマのある方の在宅生活を幅広く支えます。
ストーマケアで訪問看護を利用するには、主治医に相談して指示書をもらい、対応できるステーションを探します。介護保険がなくても、医療保険で利用できる場合があります。ステーションを選ぶ際は、専門的な知識・経験、相談や緊急時の体制、主治医・病院との連携、本人・家族への寄り添いを確認しましょう。そして、退院直後から始めることで、入院中のケアを引き継ぎ、正しいケアを早く身につけ、不安の大きい時期を支えてもらえます。ストーマのケアや気になることは、自己判断せず、訪問看護師や主治医など専門職に相談しながら、安心して在宅生活を送ってください。
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