訪問看護の制度を調べていると、「別表7」「別表8」という言葉に出会います。これらは、訪問看護の訪問回数や適用される保険を 左右する重要な区分ですが、名前だけでは何のことか分かりにくく、「特定疾病」と混同されることも少なくありません。
別表7・別表8に該当すると、通常は週3回までの医療保険の訪問看護が週4日以上になるなど、受けられる訪問看護の幅が大きく広がります。この記事では、別表7・別表8とは何か、それぞれに含まれる疾病・状態、該当すると何が変わるのか、そして混同しやすい「16特定疾病」との違いまで、看護師・事業者の方にも、利用者・ご家族にも分かりやすく解説します。なお、対象となる疾病・状態の詳細や制度は改定により変わることがあるため、具体的な内容は必ず最新の告示・通知や主治医・訪問看護ステーションにご確認ください。
別表7・別表8とは
まずは、別表7・別表8がそもそも何なのかを整理しましょう。この2つの基本的な位置づけを押さえることが理解の出発点です。
どちらも「厚生労働大臣が定める」区分
別表7・別表8は、いずれも厚生労働省の告示(診療報酬に関する定め)のなかで、厚生労働大臣が定めるものとして示されている区分です。「別表第七」「別表第八」という正式な表現を略して、一般に「別表7」「別表8」と呼ばれています。これらは、手厚い訪問看護を必要とする利用者を定めたもので、医療保険の訪問看護において特に重要になります。
別表7は「疾病」のリスト
別表7は、簡単に言えば「特に医療的なニーズが高い疾病のリスト」です。末期の悪性腫瘍や特定の難病など、継続的で手厚い看護を必要とする疾病が定められています。「どんな病気か」という病名によって判断されるのが別表7の特徴です。
別表8は「状態」のリスト
一方、別表8は「特別な医療管理を必要とする状態のリスト」です。人工呼吸器の使用や特定の医療処置が必要な状態などが定められています。別表7が「病名」で判断されるのに対し、別表8は「どんな医療的状態にあるか」という状態によって判断される点が大きな違いです。
医療保険の訪問看護で重要になる
別表7・別表8が重要になるのは、主に医療保険の訪問看護においてです。これらに該当すると、通常は週3回までの医療保険の訪問看護が週4日以上になるなど、さまざまな特例が適用されます。医療保険の訪問回数の仕組み全体については、「訪問看護は医療保険で週何回まで?|訪問回数の原則と例外・回数を増やす方法を徹底解説」もあわせてご覧ください。
別表7とは(疾病のリスト)
まず、別表7について詳しく見ていきましょう。どんな疾病が含まれるのかを理解することが大切です。
別表7の位置づけ
別表7は、正式には「厚生労働大臣が定める疾病等」と呼ばれます。これに該当する疾病の利用者は、手厚い訪問看護が必要と認められ、通常の訪問看護のルールを超えた特例が適用されます。継続的に頻回のケアを必要とする、医療依存度の高い疾病が定められています。
別表7に含まれる主な疾病(代表例)
別表7に含まれる代表的な疾病として、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、パーキンソン病関連疾患(一定の重症度のもの)、多系統萎縮症、プリオン病、後天性免疫不全症候群、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態などが挙げられます。ここに挙げたのはあくまで代表例であり、対象は制度で細かく定められています。全体の正確な内容は、最新の告示でご確認ください。
別表7に該当するかの確認方法
自分や家族の疾病が別表7に該当するかどうかは、判断が難しい場合があります。同じ疾患名でも、重症度や状態によって扱いが変わることもあるためです。該当するかどうかは、主治医や訪問看護ステーションに確認するのが確実です。該当すれば、より手厚い訪問看護を受けられる可能性があります。
別表8とは(状態のリスト)
次に、別表8について詳しく見ていきましょう。別表7との違いを意識すると理解しやすくなります。
別表8の位置づけ
別表8は、正式には「厚生労働大臣が定める状態等」と呼ばれます。特別な医療管理を必要とする状態が定められており、病名ではなく、利用者が置かれている医療的な状態によって判断されます。こうした状態にある利用者も、手厚い訪問看護が必要と認められ、特例が適用されます。
別表8に含まれる主な状態(代表例)
別表8に含まれる代表的な状態として、在宅で悪性腫瘍等の指導管理を受けている状態、気管カニューレを使用している状態、留置カテーテルを使用している状態、在宅で人工呼吸を行っている状態、在宅酸素療法を行っている状態、経管栄養や中心静脈栄養を行っている状態、人工肛門・人工膀胱を造設している状態、真皮を越える褥瘡(じょくそう)の状態、点滴注射を週3日以上行う必要がある状態などが挙げられます。これらも代表例であり、正確な範囲は最新の告示でご確認ください。
別表7との違い(疾病か状態か)
別表7と別表8の最も大きな違いは、「疾病(病名)」で判断するか、「状態」で判断するかです。別表7は「末期の悪性腫瘍」「ALS」といった病名のリスト、別表8は「気管カニューレを使用している」「真皮を越える褥瘡がある」といった状態のリストです。同じ利用者が、別表7と別表8の両方に該当することもあります。両者は、手厚い訪問看護の対象を、それぞれ異なる角度から定めているのです。
混同しやすい「16特定疾病」との違い
別表7と混同されやすいのが「16特定疾病」です。名前が似ていて紛らわしいですが、まったく別の制度なので、しっかり区別しておきましょう。
16特定疾病とは(介護保険の話)
16特定疾病とは、介護保険において、40歳から64歳までの方(第2号被保険者)が介護保険サービスを利用できるようになる、対象の疾病のことです。通常、介護保険は65歳以上の方が対象ですが、この16特定疾病に該当する場合は、40歳から64歳の方でも介護保険の対象になります。これは「介護保険を使えるかどうか」に関わる区分です。
別表7と16特定疾病は別物
別表7と16特定疾病は、まったく別の制度です。別表7は「医療保険の訪問看護で手厚いケアが受けられる疾病」、16特定疾病は「40〜64歳が介護保険を使えるようになる疾病」です。目的も、関わる保険も異なります。一部、両方に含まれる疾病もありますが、両者はイコールではありません。「難病だから医療保険」「特定疾病だから別表7」といった思い込みは誤りにつながるため、注意が必要です。
3つの区分を整理する
ここで、混同しやすい3つの区分を整理しましょう。別表7は「医療保険の訪問看護で手厚いケアが受けられる疾病のリスト」、別表8は「同じく手厚いケアが受けられる状態のリスト」、16特定疾病は「40〜64歳が介護保険を利用できるようになる疾病のリスト」です。この3つは名前が似ていますが、それぞれ役割が異なります。混同しないよう、「別表7・8は医療保険の訪問看護の話」「16特定疾病は介護保険の対象の話」と覚えておくとよいでしょう。介護保険と医療保険の使い分けについては、「訪問看護は介護保険と医療保険どちらが使える?|適用条件・優先順位・費用の違いを徹底解説」で詳しく解説しています。
別表7・別表8に該当すると何が変わるのか
別表7・別表8に該当すると、訪問看護の受け方がどう変わるのでしょうか。具体的な特例を見ていきましょう。
医療保険が優先して適用される
大きな変化の一つが、保険の適用です。通常、要介護認定を受けている方は介護保険での訪問看護が優先されますが、別表7に該当する場合は、要介護認定を受けていても医療保険での訪問看護となります。これにより、介護保険の支給限度額に左右されずに訪問看護を受けられます。
週4日以上の訪問が可能になる
医療保険の訪問看護は原則週3回までですが、別表7・別表8に該当すると、週4日以上の訪問が可能になります。継続的に手厚いケアが必要な状態に対応するため、訪問回数の上限が緩和されるのです。これが別表7・8に該当する最大のメリットといえます。
1日複数回の訪問が可能になる
別表7・8に該当すると、1日に複数回の訪問も可能になります。朝と夕に医療処置が必要な場合など、1日2回・3回といった訪問を受けられます。これにより、頻繁な観察やケアが必要な利用者にも、きめ細かく対応できます。
複数の訪問看護ステーションから訪問できる
通常は1か所の訪問看護ステーションから訪問を受けるのが原則ですが、別表7・8に該当すると、複数のステーションから訪問を受けられる場合があります。手厚い看護が必要な利用者を、地域の複数の事業所が連携して支えることができます。
複数名での訪問が可能になる
別表7・8に該当する場合、状態に応じて、複数名の看護師などで訪問することも可能になります。一人では対応が難しいケアが必要な場合に、複数名で安全にケアを提供できます。利用者と看護師双方の安全を守る仕組みです。
長時間の訪問が可能になる
別表8に該当する状態などでは、通常より長時間の訪問看護が認められる場合があります。複雑な医療処置や時間のかかるケアが必要な利用者に、じっくり対応できます。これらの特例により、別表7・8に該当する利用者は、状態に見合った手厚い訪問看護を受けられるのです。
別表7・8と「特別訪問看護指示書」の関係
別表7・8と並んでよく登場するのが「特別訪問看護指示書」です。両者の関係を整理しておきましょう。
週4日以上訪問できる3つの入り口
医療保険の訪問看護で週4日以上の訪問が可能になるのは、大きく3つのケースです。別表7に該当する疾病、別表8に該当する状態、そして特別訪問看護指示書が交付された場合です。これらのいずれかに当てはまれば、原則の週3回を超えた訪問が可能になります。別表7・8と特別訪問看護指示書は、いずれも「週4日以上への入り口」という共通点があります。
別表7・8は「継続的な状態」に対応
別表7・別表8は、末期の悪性腫瘍や人工呼吸器の使用など、継続的に手厚いケアが必要な状態に対応するものです。該当している間は、継続して週4日以上の訪問などが可能になります。慢性的・継続的な医療ニーズに応える仕組みといえます。
特別訪問看護指示書は「一時的な状態」に対応
一方、特別訪問看護指示書は、急な病状の悪化や退院直後など、一時的に頻回の訪問看護が必要になった場合に対応するものです。有効期間は原則14日間と限られています。つまり、別表7・8が「継続的」、特別訪問看護指示書が「一時的」という役割分担になっています。特別訪問看護指示書について詳しくは、「特別訪問看護指示書とは?|交付条件・期間・通常の指示書との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。
別表7・8と保険の適用(医療保険か介護保険か)
別表7・8は、どちらの保険が適用されるかにも関わります。ここは誤解しやすいポイントなので丁寧に解説します。
要介護者でも別表7なら医療保険
通常、要介護・要支援の認定を受けている方は、訪問看護も介護保険が優先されます。しかし、別表7に該当する疾病の方は、要介護認定を受けていても、訪問看護は医療保険が適用されます。これは、別表7に該当する疾病が、手厚い医療的ケアを必要とするためです。介護保険の支給限度額に縛られずに、必要な訪問看護を受けられるようにする仕組みです。
別表8該当と保険の関係
別表8に該当する状態については、保険の適用は状況によって異なります。別表8は主に、医療保険の訪問看護における訪問回数などの特例に関わる区分です。要介護認定の有無や、他の条件との組み合わせによって、どちらの保険が適用されるかが決まります。判断が難しいため、具体的なケースは主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションに確認するのが確実です。
「難病=医療保険」とは限らない点に注意
注意したいのが、「難病だから医療保険」と単純に考えないことです。難病であっても、別表7に該当しなければ、要介護者は介護保険での訪問看護となる場合があります。逆に、別表7に該当すれば医療保険が優先されます。保険の適用は、疾病名だけでなく、別表7・8への該当や要介護認定の状況など、複数の要素で決まります。思い込みで判断せず、専門家に確認することが大切です。
別表7・8はどんな場面で関わるのか
別表7・8は、立場によって関わり方が異なります。それぞれの立場での意味を整理しておきましょう。
利用者・家族にとっての意味
利用者・ご家族にとって、別表7・8への該当は「より手厚い訪問看護を受けられるかどうか」に関わります。該当すれば、週4日以上や1日複数回の訪問が可能になり、状態に見合ったきめ細かなケアを受けられます。自分や家族が該当するかどうかを知っておくことは、必要なケアを受けるうえで役立ちます。
看護師・事業者にとっての意味
看護師・事業者にとって、別表7・8は訪問回数や算定、保険の適用に直結する重要な区分です。利用者が別表7・8に該当するかを正確に把握し、適切な訪問計画と算定を行う必要があります。該当の確認を誤ると、算定上のトラブルにつながることもあるため、正確な理解が求められます。こうした記録・算定の管理は、実地指導でも確認される点です。実地指導への備えについては、「訪問看護の実地指導(運営指導)対策|準備すべきチェックリストと当日の流れを徹底解説」もあわせてご覧ください。
ケアマネジャーにとっての意味
ケアマネジャーにとっても、別表7・8は重要です。担当する利用者が別表7に該当すると、訪問看護は介護保険ではなく医療保険となり、ケアプランの立て方が変わります。介護保険の支給限度額の計算にも影響するため、別表7・8への該当を正しく把握することが、適切なケアマネジメントにつながります。
別表7・8に該当するか確認したいとき
自分や家族、担当する利用者が別表7・8に該当するか知りたいときは、どうすればよいのでしょうか。
主治医・訪問看護ステーションに確認する
別表7・8に該当するかどうかは、主治医や訪問看護ステーションに確認するのが最も確実です。疾病名や医療的な状態が、制度上の定義に当てはまるかを、専門家に判断してもらいましょう。訪問看護ステーションは、こうした制度の該当・非該当を日常的に扱っているため、相談すれば分かりやすく説明してくれます。
自己判断せず専門家に相談する
別表7・8の該当判断は、専門的な知識を要します。「この病名だから別表7のはず」と自己判断すると、誤った理解につながることがあります。特に、重症度や状態によって扱いが変わる疾病もあるため、必ず主治医や訪問看護ステーション、ケアマネジャーといった専門家に確認しましょう。正確な該当判断が、適切な訪問看護と保険適用の前提になります。訪問看護ステーションの選び方については、「訪問看護ステーションの選び方【利用者・家族向け】|後悔しないための7つのチェックポイント」も参考にしてください。
よくある質問
別表7と別表8の違いは何ですか?
別表7は「厚生労働大臣が定める疾病等」で、末期の悪性腫瘍やALSといった病名のリストです。別表8は「厚生労働大臣が定める状態等」で、気管カニューレの使用や真皮を越える褥瘡といった医療的な状態のリストです。別表7は「病名」で、別表8は「状態」で判断される点が大きな違いです。同じ利用者が両方に該当することもあります。
別表7に該当すると訪問回数はどうなりますか?
別表7に該当すると、通常は週3回までの医療保険の訪問看護が、週4日以上可能になります。さらに、1日複数回の訪問、複数の訪問看護ステーションからの訪問、複数名での訪問なども可能になります。また、要介護認定を受けていても医療保険が優先して適用されます。
別表7と16特定疾病は同じですか?
別物です。別表7は「医療保険の訪問看護で手厚いケアが受けられる疾病のリスト」、16特定疾病は「40〜64歳の方が介護保険を利用できるようになる疾病のリスト」です。目的も関わる保険も異なります。一部両方に含まれる疾病もありますが、イコールではないため、混同しないよう注意が必要です。
別表8に該当するのはどんな状態ですか?
別表8に該当する代表的な状態として、気管カニューレの使用、在宅人工呼吸、在宅酸素療法、経管栄養や中心静脈栄養、人工肛門・人工膀胱の造設、真皮を越える褥瘡、週3日以上の点滴注射が必要な状態などがあります。これらは代表例であり、正確な範囲は最新の告示でご確認ください。
自分が別表7・8に該当するか知りたいときは?
主治医や訪問看護ステーションに確認するのが確実です。別表7・8の該当判断は専門的なため、自己判断は避けましょう。疾病名や医療的な状態が制度上の定義に当てはまるかを、専門家に判断してもらうことで、正確に把握できます。該当すれば、より手厚い訪問看護を受けられる可能性があります。
まとめ
別表7・別表8は、いずれも厚生労働大臣が定める、手厚い訪問看護の対象を示す区分です。別表7は「末期の悪性腫瘍やALSといった疾病(病名)のリスト」、別表8は「気管カニューレの使用や真皮を越える褥瘡といった状態のリスト」で、疾病か状態かという点で判断の仕方が異なります。これらに該当すると、通常は週3回までの医療保険の訪問看護が週4日以上になり、1日複数回・複数事業所・複数名・長時間の訪問など、さまざまな特例が適用されます。また、要介護者でも別表7なら医療保険が優先されます。
注意したいのは、名前の似た「16特定疾病」(40〜64歳が介護保険を使えるようになる疾病)とは別物だという点です。「別表7・8は医療保険の訪問看護の話」「16特定疾病は介護保険の対象の話」と区別して覚えておきましょう。また、週4日以上の訪問への入り口としては、別表7・8のほかに一時的な状態に対応する「特別訪問看護指示書」もあります。別表7・8への該当判断は専門的なため、自己判断せず、主治医や訪問看護ステーションに確認することが大切です。制度は改定により変わることがあるため、具体的な内容は必ず最新の告示・通知でご確認ください。
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