ご家族に在宅でのケアが必要になったとき、「訪問看護」と「訪問介護」という言葉を耳にすることがあります。名前が一字違いでよく似ているため、「何が違うのか」「うちの家族はどちらを使えばいいのか」と迷う方は非常に多くいます。
結論から言えば、訪問看護は「医療的なケア」、訪問介護は「生活の支援」が中心という違いがあります。しかし実際には、両方を組み合わせて使うことも多く、単純にどちらか一方を選ぶというものでもありません。この記事では、訪問看護と訪問介護の違いを、担当者・サービス内容・料金・使い分けまで、ご家族にも分かりやすく整理して解説します。さらに、混同しやすいポイントの交通整理や、両方を併用する考え方、相談先までお伝えします。どちらを利用すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。なお、料金や制度は改定・地域により変わるため、具体的な内容はケアマネジャーや自治体にご確認ください。
訪問看護と訪問介護は名前が似ているが別のサービス
まず、この2つが根本的に異なるサービスであることを押さえましょう。名前は似ていますが、役割は大きく違います。
一字違いで混同されやすい
「訪問看護」と「訪問介護」は、「看護」と「介護」の一字違いで、見た目も響きもよく似ています。そのため、多くの方が両者を混同してしまいます。しかし、この2つは担当する専門職も、提供するサービスの内容も異なる、別のサービスです。まずは「似ているけれど違うもの」と理解することが、正しく使い分ける第一歩です。
大きな違いは「医療」か「生活支援」か
両者の最も大きな違いは、訪問看護が「医療的なケア」を中心とするのに対し、訪問介護が「生活の支援」を中心とする点です。訪問看護は病気や健康に関わるケアを、訪問介護は日常生活を送るための支援を担います。この「医療」か「生活支援」かという軸が、両者を分ける基本的な違いです。
担当する専門職が異なる
担当する専門職も異なります。訪問看護は、看護師や保健師、理学療法士などの医療専門職が担当します。一方、訪問介護は、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)といった介護の専門職が担当します。誰が訪問してくるかが違うことも、両者の違いを理解するポイントです。
ひとめでわかる違いの比較
訪問看護と訪問介護の違いを、いくつかの観点から比較して整理しましょう。ポイントを押さえると、違いが明確になります。
目的の違い
訪問看護の目的は、病状の観察や医療的な管理を通じて、利用者の健康を守り、療養を支えることです。一方、訪問介護の目的は、食事や入浴、掃除などの日常生活を支援し、その人らしい生活を送れるようにすることです。医療を支えるのが訪問看護、生活を支えるのが訪問介護、と整理できます。
担当者の違い(看護師か介護職か)
訪問看護は看護師などの医療専門職が、訪問介護は訪問介護員(ホームヘルパー)などの介護専門職が担当します。医療的な知識と技術を持つ看護師が来るのか、生活支援の専門家である介護職が来るのかという違いは、受けられるサービスの内容に直結します。
サービス内容の違い
訪問看護では、健康状態の観察、医療処置、服薬管理、医療的なケアなどを行います。一方、訪問介護では、食事・入浴・排泄の介助(身体介護)や、掃除・洗濯・調理などの家事支援(生活援助)を行います。医療的なことは訪問看護、生活のことは訪問介護、というのが基本的な役割分担です。
指示書の要否の違い
訪問看護は、主治医が発行する「訪問看護指示書」に基づいて提供されます。医療行為を伴うため、医師の指示が必要なのです。一方、訪問介護は医師の指示書は不要で、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて提供されます。この手続きの違いも、両者の性質の違いを表しています。
訪問看護とは
それぞれのサービスを、もう少し詳しく見ていきましょう。まずは訪問看護です。
看護師などが行う医療的なケア
訪問看護は、看護師や保健師、理学療法士などが利用者の自宅を訪問し、医療的なケアや療養上の世話を提供するサービスです。病気や障害があっても、住み慣れた自宅で安心して療養できるよう、医療の専門職が支えます。医療的な視点で利用者の状態を見守るのが、訪問看護の役割です。
主なサービス内容
訪問看護の主なサービス内容は、体温・血圧・脈拍などの健康状態の観察、医療処置(点滴、褥瘡のケア、カテーテル管理など)、服薬管理、医療機器の管理、リハビリ、療養上の世話、家族への相談対応など、多岐にわたります。病状に応じて、必要な医療的ケアを提供します。訪問看護でできることについては、「訪問看護でできることは?|サービス内容・できないこと・利用条件を徹底解説」で詳しく解説しています。
主治医の指示書が必要
訪問看護を利用するには、主治医が発行する訪問看護指示書が必要です。訪問看護は医療行為を含むため、医師の指示のもとで行われます。利用を希望する場合は、まず主治医に相談することになります。この指示書に基づいて、訪問看護師がケアを提供します。
医療保険・介護保険の両方がある
訪問看護は、利用者の状態や年齢に応じて、医療保険または介護保険が適用されます。要介護・要支援の認定を受けている方は原則として介護保険が優先され、それ以外の方や特定の条件に該当する方は医療保険が適用されます。どちらの保険が使われるかによって、料金や回数の考え方が変わります。詳しくは「訪問看護は介護保険と医療保険どちらが使える?|適用条件・優先順位・費用の違いを徹底解説」もあわせてご覧ください。
訪問介護とは
次に、訪問介護について詳しく見ていきましょう。訪問看護との違いが見えてきます。
訪問介護員(ホームヘルパー)が行う生活支援
訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)や介護福祉士が利用者の自宅を訪問し、日常生活の支援を行うサービスです。加齢や障害によって、一人では日常生活を送るのが難しくなった方を、生活面から支えます。医療的なケアではなく、生活を支えることが訪問介護の役割です。
身体介護と生活援助
訪問介護のサービスは、大きく「身体介護」と「生活援助」に分かれます。身体介護は、食事・入浴・排泄の介助や、着替え、体位変換など、利用者の身体に直接関わる支援です。生活援助は、掃除・洗濯・調理・買い物など、日常生活を送るための家事の支援です。利用者の状態や必要に応じて、これらの支援を提供します。
ケアプランに基づいて利用する
訪問介護は、ケアマネジャーが作成するケアプランに基づいて利用します。訪問看護のような医師の指示書は不要で、ケアプランのなかに位置づけられて提供されます。どんな支援がどれだけ必要かは、ケアマネジャーが利用者の状態や希望をふまえて計画します。
介護保険のサービス
訪問介護は、介護保険のサービスです。そのため、利用するには要介護認定を受けている必要があります(要支援の方は、介護予防・日常生活支援総合事業のサービスを利用します)。介護保険が適用されるため、自己負担は原則として費用の1〜3割です。
混同しやすいポイントを整理する
訪問看護と訪問介護が混同されやすいのには、理由があります。その混乱のもとを整理しておきましょう。
訪問看護師も清拭など生活の支援をする
混同が生じる大きな理由が、訪問看護師も、清拭(体を拭くこと)や入浴の介助、排泄の援助といった、一見「生活支援」に見えるケアを行うことです。「看護師なのに介護のようなこともするの?」と、境界が分かりにくく感じられます。実際、訪問看護でも療養上の世話として、こうした身の回りのケアを行います。
でも「医療的な視点」があるかが違う
では何が違うのかというと、訪問看護師が行う身の回りのケアには、常に「医療的な視点」が伴う点です。たとえば同じ清拭でも、看護師は皮膚の状態を観察し、異常がないかを医療的に確認しながら行います。単に体を清潔にするだけでなく、健康状態の観察とセットで行われるのが、訪問看護のケアの特徴です。この「医療的な視点の有無」が、訪問介護との本質的な違いです。
資格・できることの範囲が違う
担当者の資格が異なるため、できることの範囲も異なります。訪問看護師は医療の国家資格を持ち、医療処置を行えます。一方、訪問介護員は医療行為を行うことはできません(一部の例外を除く)。医療的なケアが必要かどうかが、訪問看護と訪問介護のどちらを利用するかの分かれ目になります。似たサービスとして訪問リハビリもあります。違いは「訪問看護と訪問リハビリの違いとは?|制度・報酬・働き方を徹底比較」で解説しています。
どちらが必要か(利用者の状態別)
では、自分の家族はどちらを利用すべきなのでしょうか。利用者の状態別に、どちらが必要かを整理します。
医療的なケアが必要な場合は訪問看護
点滴や褥瘡のケア、カテーテルの管理、医療機器の管理など、医療的なケアが必要な場合は訪問看護が必要です。これらは医療の資格を持つ看護師でなければ行えません。病気の管理や医療処置が必要な状態なら、訪問看護を利用することになります。
生活の支援が必要な場合は訪問介護
掃除や調理、買い物といった家事や、食事・入浴・排泄の介助など、日常生活の支援が必要な場合は訪問介護が適しています。医療的なケアは必要ないけれど、一人では生活を送るのが難しいという場合に、訪問介護が生活を支えます。
病状の観察が必要な場合は訪問看護
持病があり定期的に健康状態を観察してほしい、服薬をきちんと管理してほしいといった、医療的な見守りが必要な場合も訪問看護の役割です。医療の専門職が状態を継続的に観察することで、病状の変化に早く気づき、悪化を防ぐことにつながります。
判断に迷う場合の考え方
「うちの家族はどちらが必要か分からない」という場合も多いでしょう。基本的には、「医療的なケアや観察が必要か」を一つの目安に考えるとよいでしょう。ただし、実際には両方が必要なケースも多く、一人で判断するのは難しいものです。迷ったときは、後述するケアマネジャーや主治医といった専門家に相談するのが確実です。
訪問看護と訪問介護は併用できる
ここが重要なポイントです。訪問看護と訪問介護は、どちらか一方を選ぶだけでなく、両方を組み合わせて使うことができます。
多くの場合、両方を組み合わせて使う
実際には、訪問看護と訪問介護のどちらか一方だけを使うのではなく、両方を組み合わせて利用しているケースが多くあります。医療的なケアは訪問看護で、生活の支援は訪問介護で、というように、それぞれの役割で利用者を支えます。両者は対立するものではなく、補い合う関係にあります。なお、介護と看護を一体的に提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」というサービスもあります。詳しくは「訪問看護と定期巡回の違いとは?|仕組み・関係・使い分けと事業者の関わり方を徹底解説」をご覧ください。
それぞれの役割で支える
たとえば、週に数回は訪問看護師が来て健康状態を観察し医療的なケアを行い、別の日には訪問介護員が来て掃除や調理などの生活支援を行う、といった形です。医療と生活の両面から支えることで、利用者はより安心して在宅生活を続けられます。それぞれの専門職が、得意な領域で力を発揮します。
同じ日に利用することもできる
訪問看護と訪問介護は、同じ日に利用することも可能です。たとえば、午前中に訪問看護、午後に訪問介護、というように、1日のなかで両方のサービスを受けることもできます。利用者の状態や生活リズムに合わせて、柔軟に組み合わせられます。
ケアプランで全体を調整する
訪問看護と訪問介護をどう組み合わせるかは、ケアマネジャーが作成するケアプランで調整されます。利用者の状態や希望、介護保険の支給限度額などをふまえて、必要なサービスを組み立てます。両方をバランスよく利用するためにも、ケアマネジャーとの相談が欠かせません。
料金の違い
気になる料金についても、両者の違いを整理しておきましょう。なお、料金は改定や地域によって変わるため、目安として捉えてください。
訪問看護の料金の考え方
訪問看護の料金は、医療保険か介護保険か、訪問時間、提供されるケアの内容などによって決まります。介護保険の場合は訪問時間の区分によって、医療保険の場合は訪問回数などによって費用が変わります。保険が適用されるため、自己負担は費用の一部で済みます。
訪問介護の料金の考え方
訪問介護の料金は、身体介護か生活援助か、そして訪問の時間によって決まります。一般的に、身体介護のほうが生活援助より料金が高めに設定されています。訪問介護は介護保険のサービスのため、自己負担は原則1〜3割です。
自己負担の目安
訪問看護・訪問介護とも、保険が適用されるため、自己負担は費用の一部(介護保険なら原則1〜3割)です。ただし、実際の負担額は、利用する回数や時間、サービス内容、所得に応じた負担割合によって変わります。具体的な費用は、ケアマネジャーや事業所に確認するとよいでしょう。
保険の種類で変わる
訪問介護は介護保険のサービスですが、訪問看護は医療保険と介護保険のどちらもあり得ます。どちらの保険が適用されるかによって、料金や利用の仕組みが変わります。この点も、訪問看護と訪問介護の違いの一つです。介護保険には要介護度ごとの支給限度額があり、その範囲内で各サービスを組み合わせて利用します。
利用したいときの相談先と流れ
訪問看護や訪問介護を利用したいとき、どこに相談すればよいのでしょうか。相談先と利用の流れを解説します。
ケアマネジャーに相談する
介護保険を利用している方は、まず担当のケアマネジャーに相談しましょう。ケアマネジャーは、利用者の状態や希望をふまえて、訪問看護・訪問介護を含む必要なサービスを組み立ててくれます。どちらのサービスがどれだけ必要かを、専門家の視点で提案してもらえます。
主治医に相談する
訪問看護を利用したい場合は、主治医への相談も必要です。訪問看護は主治医の指示書に基づいて提供されるため、医療的なケアが必要かどうかを主治医に判断してもらいます。病状に関することは、主治医に相談するのが確実です。
地域包括支援センター
まだ介護保険の認定を受けていない場合や、どこに相談すればよいか分からない場合は、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを支える総合相談窓口で、介護保険の申請方法や、利用できるサービスについて案内してくれます。
利用開始までの流れ
一般的には、要介護認定の申請、認定、ケアマネジャーによるケアプランの作成を経て、サービスの利用が始まります。訪問看護の場合は、あわせて主治医の指示書が必要です。手続きが分からない場合も、ケアマネジャーや地域包括支援センターがサポートしてくれるので、安心して相談しましょう。
よくある質問
訪問看護と訪問介護の違いは何ですか?
訪問看護は看護師などが行う「医療的なケア」、訪問介護は訪問介護員(ホームヘルパー)が行う「生活の支援」が中心です。訪問看護は主治医の指示書が必要で医療保険・介護保険のどちらもあり得ますが、訪問介護は介護保険のサービスでケアプランに基づいて利用します。担当者もサービス内容も異なる、別のサービスです。
両方同時に使えますか?
使えます。むしろ、訪問看護と訪問介護は、両方を組み合わせて利用することが多くあります。医療的なケアは訪問看護、生活の支援は訪問介護と、それぞれの役割で利用者を支えます。どう組み合わせるかは、ケアマネジャーがケアプランで調整してくれます。
同じ日に利用できますか?
できます。たとえば午前中に訪問看護、午後に訪問介護というように、同じ日に両方のサービスを利用することも可能です。利用者の状態や生活リズムに合わせて、柔軟に組み合わせられます。ただし、サービスの組み合わせはケアプランに基づいて調整されます。
どちらを使えばよいか分かりません
「医療的なケアや病状の観察が必要か」を一つの目安に考えるとよいでしょう。医療的なケアが必要なら訪問看護、生活の支援が必要なら訪問介護です。ただし、実際には両方が必要なことも多く、判断は簡単ではありません。迷ったときは、ケアマネジャーや主治医、地域包括支援センターに相談するのが確実です。
訪問看護師は家事もしてくれますか?
訪問看護師は、療養上の世話として身の回りのケアを行うことはありますが、掃除や調理といった家事支援(生活援助)は基本的に訪問介護の役割です。家事の支援が必要な場合は、訪問介護を利用することになります。医療的なケアは訪問看護、家事などの生活支援は訪問介護、と役割が分かれています。
まとめ
訪問看護と訪問介護は、名前が似ていますが、担当者もサービス内容も異なる別のサービスです。訪問看護は看護師などが行う「医療的なケア」で、主治医の指示書に基づき、医療保険・介護保険のどちらもあり得ます。訪問介護は訪問介護員(ホームヘルパー)が行う「生活の支援」で、介護保険のサービスとしてケアプランに基づいて利用します。訪問看護師も清拭などのケアを行うため混同されがちですが、「医療的な視点があるか」が本質的な違いです。
大切なのは、両者はどちらか一方を選ぶものではなく、多くの場合、組み合わせて利用するということです。医療的なケアは訪問看護、生活の支援は訪問介護と、それぞれの役割で利用者を支え、同じ日に利用することもできます。どちらが必要か、どう組み合わせるかに迷ったら、ケアマネジャーや主治医、地域包括支援センターに相談しましょう。専門家の力を借りながら、ご家族に合ったサービスを組み立てることが、安心できる在宅生活につながります。
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